サイデリアル方式とトロピカル方式

占星術におけるサイデリアル方式とトロピカル方式を紹介します。どちらも牡羊座の始点を決める方法です。現代西洋占星術では、トロピカル方式が主に使われます。

サイデリアル方式

占星術では牡羊座から魚座まで、天空を12分割して位置を定めています。ここで問題は、「牡羊座の始まりはどこか」です。

古代ではこの牡羊座の始まりの位置を決めるのに、あまり動くことのない、ある恒星を目安に牡羊座の始点を決めていました。つまり、ある恒星の位置を牡羊座の0度と決めていたのです。この決め方をサイデリアル方式と呼んでいます。

紀元前147年から127年前までは、このサイデリアル方式しかありませんでした。

歳差運動によるずれ

紀元前147年から127年以降、地球の地軸が移動する歳差運動によって春分点が移動することが発見されました。あまり動くことのない恒星でも少しずつ動き、それまで決めていた春分点も動いていることが分かったのです。

どのくらいのずれかというと、72年に約1度のずれが生じます。おおよそ2150年に1サイン(30度)動き、約25800年で元の位置に戻ってくる計算になります。

歳差運動、春分点についてはウィキペディアが参考になると思います。

トロピカル方式

72年に約1度のずれが生じてしまうことから、移動する春分点を固定してしまおうという考えでトロピカル方式が生れます。

トロピカル方式の春分点の決め方は、太陽が黄経0度の位置にぴったり重なる地点とされていて、毎年日時が変わります。

現代の西洋占星術では、主にトロピカル方式が採用されています。ホロスコープを作成するソフトもほぼトロピカル方式で作られています。

サイデリアル方式とトロピカル方式の違い

21世紀に入った現在、この2つの方式で天体位置を計算すると両者には約30度のズレがあるとされています。

例えば、3月20日頃の春分の日にはトロピカル方式では牡羊座の0度になりますが、サイドリアル方式では、おおよそ魚座の0度になります。

雑誌やネットで12星座占いが掲載されていますが、ほとんどがトロピカル方式になります。サインの始点が固定のため、12星座占いができます。もしサイドリアル方式で占う場合は、そうはいきません。

トロピカル方式とサイデリアル方式どちらにすべきか

トロピカル方式とサイデリアル方式どちらにすべきかですが、トロピカル方式は西洋占星術で主に使用され、サイデリアル方式は主にインド占星術で使用されます。

どちらが当たるか当たらないかは、結論がでていません。使いやすいのは、トロピカル方式です。サイデリアル方式は、いままでの説明のとおり、少しずつ春分点が動くため、逐一計算しなおす必要があります。また、現在の春分点がどこなのか、いくつかの考えがあり、どれを採用するのかも難しい問題です。

サイデリアル方式の春分点

では、サイデリアル方式の春分点は今、どのにいるのか、いくつかの考えを紹介します。

ここにはさまざまな議論がありますが、大きく2つに分かれます。既に水瓶座に突入したという意見と、まだ魚座の5度前後にいるという意見です。

サイデリアル方式で占星術を行う場合、春分点の基点はいつか、今どのくらいのズレがあって、どの位置にいるのかが問題になってきます。サイデリアル方式を用いるインド占星術では、国が公認している基点があるほど重要なポイントなのです。

ここからはサイデリアル方式にした場合の春分点の位置について3つ紹介します。

以下のリンクにはプロモーションが含まれます。

インド占星術で使用している春分点

一般にインド政府が公認している基点が主流となっているようです。
2000年1月1日時点で魚座の6度9分(計算すると基点は約AC285年)

正確な数字はインターネットやこちらの本を参考にしてください。



実践インド占星術 単行本

こちらの本には日本占星天文歴を使用したチャートの作成方法とトロピカル方式からサイドリアル方式への変換方法が掲載されています。

尚、インド占星術でいう春分点の位置には政府公認以外にもいくつかの度数が存在しますので、どの情報を元にしているのかを確かめるとよいと思います。

日本標準時で編集された占星天文歴

2000年1月1日時点で魚座5度15分49秒(計算すると基点は約AC220年)
各ページの右下に記載のSVP(Synetic vernal point)という値があります。毎月1日の位置です。1900-2010年版と2001-2050年版がありますが、どちらも同じ数字です。

天体位置は全てトロピカル方式のためトロピカル方式の位置からSVPの値を使ってサイドリアル方式の位置を計算します。この計算式の説明は書籍内にありませんので、以下に私なりの計算方法を記載します。(他にも簡単な方法があるかもしれませんので独自に研究されてください)

例:ある年の2月1日の金星の位置がトロピカル方式で獅子座の15度27分のとき。
ここでは2月1日のSVPを魚座5度15分49とします。

1.天文歴には毎月の1日の位置のみ掲載されているため、月の途中で且つ、正確に計算したい場合はSVPの位置を計算する必要があります。その場合は翌月の1日のSVPから差し引いて目的の日付の位置を計算してください。
大雑把ですが、30日で5秒(00.00.05)後退移動します。6日で約1秒を目安に計算してもよいと思います。

2.牡羊座0度とSVPの差分を求める。
(天文歴は60進数なので計算に注意してください)

A. 魚座5度15分49を360度表記に。335.15.49
B. 牡羊座0度を360度表記に。360ですが計算しやすいように359.59.60とする
C. 引き算 359.59.60-335.15.49 = -24.44.11 ←これが差分
SVPは後退しているのでマイナスになります。

3.金星の位置獅子座15度27分から1で算出した差分を足す。

A. 獅子座15度27分を360度表記に。135.27.00
計算しやすいように1度繰り下げて 134.86.60
B. 足し算 134.86.60+-24.44.11 (符号がマイナスなので結果として引き算)
=110.42.49
C. 110.42.49を星座宮に変換する。蟹座20度42分49

ということで、トロピカル方式の金星の位置獅子座の15度27分は、サイドリアル方式でいうと蟹座20度42分49になりました。

以下の2冊の天文歴にはここで説明したSVPポイントが掲載されています。



完全版 日本占星天文暦 1900-2010



21世紀占星天文暦―2001~2050A.D.

西洋占星術のホロスコープを作成する場合は、
上記2つともまずはトロピカル方式でチャートを作り、サイデリアル方式に変換させるという方法です。

ホロスコープ作成ソフトStarGazerの春分点

StarGazerでは、サイデリアル方式のホロスコープを作成することができます。トロピカル方式と同様に瞬時につくることができます。

StarGazerには春分点を設定する画面があります。その初期値として設定されているのが(リセットボタンが2つあるのでリセットすると)128年1月1日と294年6月1日です。前者の場合、2000年現在は約魚座4度、後者は約魚座6度18分になります。ただし、これはあくまでも初期値であり根拠はありません(本文に説明があります)。基本的にはユーザーがその春分点を設定するようになってます。

もし自分で設定する場合は、最小単位を月まで設定することができます。例えば紀元前265年5月という設定は-265年5月という入力になり、日付は1日で固定されています。

例えばホロスコープ3重円画面で設定メニュー-計算設定タブの右下「春分点設定」で設定します。この設定値は15件まで保存することが可能です。

簡単な説明となりましたが、私が使用しているStarGazerは12.02で、OSがWindows10,64bitです。ホロスコープ3重円と5重円の固定春分点の設定は可能ですが、進行経過時期表では設定しようとしても入力できないため、何かがうまく動作していないようです。ホロスコープが作れるので今のところ不便さを感じていないため、最新版に更新していないからかもしれません。

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